猫の話3

 

 二度目に逃げられたところで前回のお話が終わり、ボーっとアップしないままに暑い夏が進行し続けている。一度、少し時間を巻き戻そう。そう、階段の下まで。

   先生に来てもらっているのでとにかくビーを捕まえようとまた二階に上がり、隅っこに逃げたネコを三たび捕まえて階段を下りて行く。もう、途中からバタバタし始め、階段を降りきったあたりでビーが私の背中に回ってしまい、爪をたてられぎゃーっっと叫んでいると、アシスタントの女性が助けに来てくれて背中のネコをおさえてくれた。と思いきや、知らない人に捕まれたビーがさらに暴れもがいて階段の壁をばりばりかきむしる。ネコの毛と、壁の表面が削れてもあもあと舞い上がる。アシスタントは暴れもがくネコを持っていられるはずもなく、ビーは脱兎のごとく階段駆け上がり逃げて行った。私はあまりのことに呆然として、しばらくなすすべもなく突っ立っていた。

先生に、「飼い主さんが抑えてられないんじゃあ無理ですね」と言われ、またご自分で抜糸を試みるように言われた。やはり無理なら病院に連れていって麻酔をかけて処置する、ということになった。わざわざ来てもらって、無料の往診なので一応ぺこぺことお詫びをした。そのあと、どこに隠れたのかさっぱり見つからず、少し戸が開いていた部屋の押し入れの奥の隅におびえて固まっているビーを見つけた。引っぱりだして膝に乗せて抱いてやった。すごくおとなしい。しかし、いざとなるとこのネコは本当にすさまじい!先生の気配であんなに逃げ出すくらい病院での手術の記憶はショックなことであったのだろう。

  病院には連れていけないなあ。自分で何とか抜糸をしてあげないと・・・

 

  2、3日後、糸を切り易そうなハサミを用意し、クッションに寝ているビーをそのまま机の上に乗せる。照明をばっちり当てて、ビーの頭を私の肩口に乗せ、お腹の縫い目がよく見えるように足を開く。前回結び目の先だけ切ってしまったので手で引っ張る事が出来ないが、ハサミをぐっと結び目に差し込み切ってみる。「切れた!」切れた糸を毛抜きで引き抜く。取れた!一つ切れたので希望が出て来た。残り7つ。一つずつゆっくり切っていく。 最後の2つは結び目の先が残っていたので、ネコが取ろうと引っ張ったらしく、少し血がにじんだように赤くなってた。「今取ってあげるよ。おとなしくしててね。」もう少しだよ。とネコと自分を励まし何とか最後の糸を引き抜く。「やった!」。斯くして抜糸は自力で無事に終わったのでありました。

肉球がちょっとだけ黒いビー
肉球がちょっとだけ黒いビー